【特別区Ⅰ類】論文の頻出テーマと対策方法を完全解説

特別区の論文対策はどう進めればいい?

特別区ではどんなテーマが出るの?

特別区Ⅰ類採用の合格をめざすみなさん、論文対策は進んでいますか?

特別区Ⅰ類では、第1次試験で行われる論文試験の配点が高いといわれています。
特別区Ⅰ類の最終合否は第1次試験と第2次試験の総合成績をもとに出されるため、ぜひとも論文試験で高得点を獲得して合格を引き寄せたいものです。

そこで今回は、特別区Ⅰ類採用を受験するあなたに向けて、論文の頻出テーマと対策方法について解説していきます!

武田講師

実際に本試験で出題されたテーマを挙げながら解説しているので、論文が苦手な受験生も必見です!

論文の出題傾向を掴もう

過去に出題されたテーマは?

論文対策を始めるにあたっては、まず過去の出題テーマの傾向を掴むことが大切です。

特別区Ⅰ類の論文は、2テーマのうち1テーマを選択して論述する形式となっています。
過去の出題テーマの抜粋を見てみましょう(直近3年分は全文も掲載しています)。

【2024年度】

①デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会のために、自治体におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)が推進されています。こうした中で、特別区においては、専門人材の体制整備やデジタルを活用した区民サービスの更なる向上などの課題が存在しています。このような状況を踏まえ、地方行政のデジタル化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

②我が国では、いじめ防止対策推進法の施行以降、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校での積極的な認知などによるいじめの早期発見・早期対応が進められてきましたが、不登校などの「重大事態」は増加し、深刻ないじめはあとを絶たない状況です。いじめといじめによる不登校の解消のために、関係機関と連携し、児童・生徒の声にもしっかりと耳を傾けながら必要な支援を行うことが重要です。このような状況を踏まえ、いじめといじめによる不登校対策について、特別区職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2024年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

【2023年度】

①スマートフォン等の情報通信機器の普及に伴い、区民生活のデジタル化が進む中で、行政の情報発信のあり方にも変化が求められています。特別区においても、デジタル・デバイドの解消を推進する一方で、今後の社会の担い手となる、10代・20代を中心とした若年層について、その情報収集手段や価値観、生活環境を理解した上で情報発信を行う必要があります。また、行政活動である以上、効果検証や継続性の視点も重要です。このような状況を踏まえ、若年層に伝わりやすい行政情報の発信について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

②我が国では、少子化を背景とした人口の減少傾向や、高齢化の更なる進展等による経済社会への影響が懸念されている中で、社会経済活動の維持に向けた新たな人材の確保という課題が生じています。こうした課題に対して、特別区では少子化対策等の長期的な取組に加え、当面の生産年齢人口の減少に伴う地域活動の担い手不足の解消等の対策が早急に求められています。このような状況を踏まえ、人口減少下における人材活用について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2023年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

【2022年度】

①特別区では、地方分権の進展や、児童相談所の設置に加え、新型コロナウイルス感染症対策により、前例のない課題やニーズが生まれ、区民が期待する役割も、かつてないほど複雑で高度なものとなっています。特別区がこれらの課題の解決に向けた取組を進めていくには、区民に最も身近な基礎自治体として、自立性の高い効率的な事務運営が重要です。このような状況を踏まえ、区民の生命や生活を守るための、限られた行政資源による区政運営について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

②特別区では、人口の流動化、価値観やライフスタイルの多様化によって地域コミュニティのあり方に変化が生じています。また、外国人の増加も見込まれる中、様々な人が地域社会で生活する上で、地域コミュニティの役割はますます重要となっています。こうした中、行政には、年齢や国籍を問わず、多様な人々が地域コミュニティの活動に参加できるような仕組みづくりや、既存の活動を更に推進するための取組が求められています。このような状況を踏まえ、地域コミュニティの活性化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2022年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

年度テーマ①テーマ②
2024地方行政のデジタル化いじめといじめによる不登校対策
2023若年層に伝わりやすい行政情報の発信人口減少下における人材活用
2022限られた行政資源による区政運営地域コミュニティの活性化
2021区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方ごみの縮減と資源リサイクルの推進
2020先端技術を活用した区民サービスの向上都市における地域の防災力強化
2019外国人の増加に伴い生じる新たな課題認知症高齢者への対応
2018住民との信頼関係の構築子どもの貧困問題
2017空き家問題社会における女性の活躍推進
2016ユニバーサルデザインの視点に立ったまちづくり区民の視点に立ったICTの更なる利活用推進
2015自治体事務のアウトソーシングワークライフバランスの実現
2014自転車を安全・安心に利用できるまちづくりグローバル化の流れを反映させた取組
2013発信したい東京の魅力とその取組いじめや体罰が起こる要因と取組
2012自治体の説明責任の意義と果たし方人口減少・高齢社会において暮らしやすい地域の実現
2011災害に強い地域社会のあり方と地震対策地域コミュニティ衰退の要因と対策
2010待機児童増加の要因と対策都市生活の基盤となる施設のあり方と社会における合意形成
2009都市における犯罪被害への課題と要因、安心して暮らせる地域社会の実現学校選択制の取りやめ要因と地域社会が持つ問題、これからの学校と地域社会との関係
2008特別区間の連携・協力と自立した行政運営情報通信ネットワークの活用方法
2007住民との協働の進め方環境問題
2006少子化問題安心して暮らすことのできる地域社会の実現
2005地域福祉の向上地震対策
2004多様化した住民の要望への対応持続可能な社会の構築に向けた生活のあり方の見直し
2003安心できる区民生活と行政の役割働き方の多様化とこれからの社会
2002これからの地域社会と公務員の役割都市の再生と快適環境の構造
論文テーマ一覧表

武田講師

幅広いテーマが出題されていますが、大まかにいえば「特別区が今抱えている課題」の中から取り上げられていることが分かりますね!

"聞かれていること"を注意深くチェックせよ

過去に出題されたテーマを眺めてみると、同じようなテーマが複数あることに気づくと思います。
しかし、同じようなテーマであっても、問題文をよく読むと実は異なることが問われている点に注意しなければなりません。

例えば、下記のテクノロジーに関するテーマを見てみてください。

【2020年度:テーマ①】

近年、これまで人間が行っていた定型業務の自動化や、AI(人工知能)によるビッグデータの分析等、先端技術を活用した業務効率化の取組が急速に進んでいます。一方、これらの取組を推進する上では、コストや情報セキュリティ、人材面等における課題もあるとされており、自治体職員は、こうした変化に対応していかなければなりません。このような状況を踏まえ、先端技術を活用した区民サービスの向上について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2020年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

【2016年度:テーマ②】

スマートフォンをはじめとした情報通信機器の普及やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用拡大等、情報通信技術(ICT)は生活の中に浸透しています。こうした中、特別区では、ICTの利用による区民サービスの向上、地域社会との連携強化に向けた取り組みが進められています。このような状況を踏まえ、区民の視点に立ったICTの更なる利活用の促進に向けて、特別区職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2016年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

どちらも「テクノロジーを活用して区民サービスを向上させること」が主なテーマとはなっているものの、聞かれていることが少し異なっています。

他にも、例えば下記の地域コミュニティに関するテーマを見てみてください。

【2022年度:テーマ②】

特別区では、人口の流動化、価値観やライフスタイルの多様化によって地域コミュニティのあり方に変化が生じています。また、外国人の増加も見込まれる中、様々な人が地域社会で生活する上で、地域コミュニティの役割はますます重要となっています。こうした中、行政には、年齢や国籍を問わず、多様な人々が地域コミュニティの活動に参加できるような仕組みづくりや、既存の活動を更に推進するための取組が求められています。このような状況を踏まえ、地域コミュニティの活性化について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2022年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

【2011年度:テーマ②】

地域コミュニティは、地域住民が助け合って生活を営む基盤であり、暮らしやすい住環境を保つために重要な役割を果たしています。しかし、現代の社会では、地縁的なつながりが希薄化し、地域コミュニティが衰退する傾向が見られます。このような状況がなぜ生じているのか、主な要因を説明した上で、地域コミュニティの活性化について、あなたの考えを論じなさい。

出典:2011年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

2011年度は「地縁的なつながりの希薄化」が起きている要因を踏まえた出題、2022年度は「住民の多様化」にいかに対応するかという出題です。
同じ「地域コミュニティ」がテーマでも、現在の特別区における課題が色濃く反映されていることが分かります。

最後に、下記の災害対策に関するテーマについても見ておきましょう。

【2011年度:テーマ①】

首都直下型地震の発生は、近い将来に高い確率で予測されており、その被害を最小限に抑えることは自治体にとって大きな課題です。特別区の現状を踏まえ、災害に強い地域社会のあり方を述べた上で、大震災に対する安全・安心の確保のために特別区が果たすべき役割について、あなたの考えを論じなさい。

出典:2011年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

【2005年度:テーマ②】

昨年発生した新潟県中越地震は、甚大な被害を引き起こし、住民生活に深刻な影響をもたらしました。今後、大都市東京で発生が予測される大地震に対して、その被害を最小限に抑えるためにはどうすべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2005年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

「災害(地震)対策」という大きなくくりでは共通ですが、2011年度には「災害に強い地域社会のあり方」も述べなければならない点で違いがあります。

論文対策を進めるにあたり、過去問のテーマを把握して練習しておくことは確かに大切な作業であることは間違いありません。

しかし、以上の複数の過去問を見て分かるように、例えば「"地域活性化"が出題されたら○○の論点を書く」「"環境問題"の場合は△△について触れる」…という風に決め込んでしまうと、テーマの論点とは異なる視点で論述することになり減点対象となり得ます。

そのため、たとえテーマが似ていたとしても、その年の切り口で出題されることをよく理解した上で「このテーマをどの切り口で考えることが求められているのか?」をよくよく見極めて論じるようにしましょう。

近年の出題傾向の変化に着目すべし

比較した出題例からも分かるように、近年、特別区Ⅰ類の論文試験の傾向は以前と比べて以下のような変化が見られます。

テーマの複雑化

まず一目で分かるのが「問題文の文章量の増加」で、近年は問いの背景が非常に詳しく記載される傾向にあります。

2006年度と2023年度のテーマを比較してみましょう(傍線はこちらでつけました)。

【2006年度:テーマ①】

我が国の人口は、出生率の低下などにより、戦後初めての減少となりました。このような少子化の進行が及ぼす様々な影響の中で、特別区はどのような役割を果たしていくべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2006年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

【2023年度:テーマ②】

我が国では、少子化を背景とした人口の減少傾向や、高齢化の更なる進展等による経済社会への影響が懸念されている中で、社会経済活動の維持に向けた新たな人材の確保という課題が生じています。こうした課題に対して、特別区では少子化対策等の長期的な取組に加え、当面の生産年齢人口の減少に伴う地域活動の担い手不足の解消等の対策が早急に求められています。このような状況を踏まえ、人口減少下における人材活用について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2023年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

どちらも「人口減少」が主なテーマとなっているものの、2023年度では「こうした課題に対して~が早急に求められています。」という近年の背景がさらに追加されています。

また、2023年度は「人口減少下における人材活用にどう取り組むか」を述べるものですが、その前に「このような状況を踏まえ」とあることに注意が必要です。
「このような状況」(=第1段落の内容)を踏まえないまま人材活用の方法についての一般論を解答しても高得点は望めません。

ここでは、「特別区では少子化対策等の長期的な取組に加え、当面の生産年齢人口の減少に伴う地域活動の担い手不足の解消等の対策が早急に求められています」とあるので、現在特別区で行われている取組を踏まえた上で、現状や課題、今後の取組について論じることが求められているのです。

武田講師

テーマが複雑化し情報量が増えると大切なポイントを見落としやすくなるので、ポイントとなるところに線を引きながら注意深く読み取り、出題者が何を問うているかを正確に掴むようにしましょう!

論ずる内容の変化

近年の出題傾向としてもう一つ求められているのは、特別区職員としての当事者意識を持ち、その視点から論じることです。

2022年度のテーマを例に見てみましょう(傍線はこちらでつけました)。

【2022年度:テーマ①】

特別区では、地方分権の進展や、児童相談所の設置に加え、新型コロナウイルス感染症対策により、前例のない課題やニーズが生まれ、区民が期待する役割も、かつてないほど複雑で高度なものとなっています。特別区がこれらの課題の解決に向けた取組を進めていくには、区民に最も身近な基礎自治体として、自立性の高い効率的な事務運営が重要です。このような状況を踏まえ、区民の生命や生活を守るための、限られた行政資源による区政運営について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

出典:2022年度 特別区Ⅰ類採用試験 論文問題

過去のテーマを見ると、以前の問題文の末尾は「あなたの考えを論じなさい」という形式でしたが、2013年度あたりから現在まで、上記のような「特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」という形式になりました。

つまり、与えられたテーマに対して一般論を述べるのではなく、また国や都道府県の職員がやるようなことを書くのでもなく、基礎自治体である特別区の職員としてどう取り組むかを答える必要があるため、特別区の現状や課題についてきちんと把握しておくことが必須となります。

武田講師

以前は「要因」や「取組」を絡めて問われることもしばしばありましたが、近年はこの「特別区の職員として」形式に落ち着いているので、この形式で論文対策を進めていくようにしましょう。

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武田講師

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論文の頻出テーマは?

出題傾向等を踏まえた上で、頻出テーマについて紹介します。
頻出テーマは過去に繰り返し形を変えて出題されているため、受験生が優先して対策すべきテーマであるといえます。

先ほどの論文テーマ一覧表を分野ごとに分けると、下記の表1・2のようになります。

年度テーマ①分野テーマ②分野
2024地方行政のデジタル化デジタルいじめといじめによる不登校対策教育
2023若年層に伝わりやすい行政情報の発信広報人口減少下における人材活用少子高齢化
2022限られた行政資源による区政運営行政運営地域コミュニティの活性化地域コミュニティ
2021区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方まちづくりごみの縮減と資源リサイクルの推進環境
2020先端技術を活用した区民サービスの向上デジタル都市における地域の防災力強化防災
2019外国人の増加に伴い生じる新たな課題住民の多様化認知症高齢者への対応高齢者
2018住民との信頼関係の構築協働子どもの貧困問題子育て
2017空き家問題その他社会における女性の活躍推進働き方
2016ユニバーサルデザインの視点に立ったまちづくりまちづくり区民の視点に立ったICTの更なる利活用推進デジタル
2015自治体事務のアウトソーシング行政運営ワークライフバランスの実現働き方
2014自転車を安全・安心に利用できるまちづくりまちづくりグローバル化の流れを反映させた取組グローバル化
2013発信したい東京の魅力とその取組広報いじめや体罰が起こる要因と取組教育
2012自治体の説明責任の意義と果たし方行政運営人口減少・高齢社会において暮らしやすい地域の実現少子高齢化
2011災害に強い地域社会のあり方と地震対策防災地域コミュニティ衰退の要因と対策地域コミュニティ
2010待機児童増加の要因と対策子育て都市生活の基盤となる施設のあり方と社会における合意形成まちづくり
2009都市における犯罪被害への課題と要因、安心して暮らせる地域社会の実現防犯学校選択制の取りやめ要因と地域社会が持つ問題、これからの学校と地域社会との関係教育
2008特別区間の連携・協力と自立した行政運営行政運営情報通信ネットワークの活用方法デジタル
2007住民との協働の進め方協働環境問題環境
2006少子化問題少子高齢化安心して暮らすことのできる地域社会の実現防犯
2005地域福祉の向上住民の多様化地震対策防災
2004多様化した住民の要望への対応住民の多様化持続可能な社会の構築に向けた生活のあり方の見直し環境
2003安心できる区民生活と行政の役割防犯働き方の多様化とこれからの社会働き方
2002これからの地域社会と公務員の役割その他都市の再生と快適環境の構造まちづくり
表1

過去に出題された回数分野
5回まちづくり
4回デジタル、行政運営
3回少子高齢化、防災、防犯、環境、働き方、教育、住民の多様化
2回広報、子育て、協働、地域コミュニティ、その他
1回高齢者、グローバル化
表2

上記の表より、過去に出題された46テーマのうち「まちづくり」「デジタル」「行政運営」の3分野が約3割を占めていることが分かります。
これを踏まえ、下記の10の頻出分野から優先的に対策を進めていくことをオススメします。

優先的に対策を進めるべき10テーマ

まちづくり防犯
デジタル環境
行政運営働き方
少子高齢化教育
防災住民の多様化

これらについて特別区では今どのような課題があり、現状何に取り組んでいるのかをしっかり調べ、今後どう対応していくべきか自分の考えをまとめておきましょう。
これは面接対策としても役立つので、面倒がらずに取り組んでおくことをオススメします。

ただし、特別区では論文試験の配点が高く徹底的な対策が必要なことから、単純に頻出分野についてのみ対策をするのでは不十分です。

例えば頻出テーマの一つである「教育」の中には、昨今特別区を含めて全国で問題視されている「児童虐待問題」も含まれます。
児童虐待をテーマにした論文は、これまで特別区Ⅰ類において出題されたことはありませんが、最近注目されている課題として出題される可能性があるでしょう。

このように、頻出分野をそのまま適応するよりも、その分野から派生する様々な課題をさらに細かく見ていくとより濃密な対策とすることができます。

論文対策の進め方

いよいよ、具体的な対策方法についてお伝えしていきます。

どのようなテーマが出題されても一定レベル以上の論文が書けるようになるためには、特別区をめぐる時事問題についての豊富な知識と、読み手に伝わりやすい論文の「型」を身につけることが求められます。

以下の3つの流れで対策を進めていきましょう。

①特別区の現状と課題を知る

すでにお伝えしたように、近年の特別区Ⅰ類の論文試験では、特別区が現在抱えている課題について特別区職員としてどう取り組むべきかを論じることが求められています。

したがって、特別区が現在抱えている課題や今行われている施策に関する正しい理解が欠かせません。

例えば、次のキーワードは特別区の課題として注目されているものですが、これらのキーワードの意味や特別区の現状等についてどの程度説明ができるでしょうか?

説明できますか?

  • 生産年齢人口
  • 持続可能な開発目標
  • デジタルデバイド
  • AI・ICT
  • ビッグデータ
  • ノーマライゼーション
  • ユニバーサルデザイン
  • アウトソーシング
  • シビックプライド

これらについて「自分の言葉でおおよそ説明できる」という人は一安心かもしれませんが、そのような人は多くないでしょう。

こうした用語やそれについての現状認識ができていないと的外れな論文を書いてしまう可能性があるため、「そもそも言葉の意味が分からない」という人はもちろん「言葉は知っているけど、それについての特別区の現状や課題は知らない…」という人も、今日から一つずつ勉強していきましょう。

さて、「特別区の現状や課題について知っておく大切さは分かったけど、どこでどう調べたらいいのか分からない」という方も少なくないと思います。

ここでは、情報収集のしやすいものとして次の3つのものを挙げたいと思います。

特別区関連のホームページ

特別区の情報を知るなら、まずは23区のホームページが欠かせません。
区のホームページは区民向けの情報が分かりやすくまとまっているので、区の情報を仕入れるのに最適です。

ただし、ホームページはあくまでも区民向けであるため、例えば区の施策や計画、統計データなど受験生が調査したいことを閲覧するにはやや見にくい構造になっている点に注意しましょう。

また、複数の区について一度に調べたい場合には、各区の情報を一気に検索できる「横断検索」がオススメです。
例えば「23区それぞれの人口が知りたい」という場合には、横断検索画面で「人口」と検索すると各区ホームページの人口に関するページがヒットします(特定の区のみを検索することもできます)。
目当ての情報をトップページから探そうとするとなかなかたどり着けないことがあるため、受験生なら知っておいて損はないでしょう。

そして、場合によっては特定の区だけではなく、特別区全体のことについて調べたいときもあると思います。
その場合には、「特別区長会」「特別区協議会」「特別区長会調査機構」「特別区全国連携プロジェクト」などのホームページが参考になります。
特別区がまさに今取り組んでいる課題や特別区全体の統計情報なども掲載されているので、各区のホームページと併せて活用してみてください。

武田講師

各区の取組を見ておくと、論文の中で一事例として引用できるだけでなく面接のネタとしても使えるため、大変有効な方法といえるでしょう。

東京都庁のホームページ

東京都の課題は特別区にも関わりが大きいものなので、東京都庁のホームページもチェックしておきましょう。

例えば、トップページの「暮らし・健康・福祉」の中の「防災・防犯」にページには、「東京都の防災対策」「東京都地域防災計画」「東京都の防災プラン」「震災に強い都市づくり」「不燃化特区」などの概要が記載されています。
空き時間に一読しておくだけでもよい勉強になるでしょう。

特別区関連及び東京都庁のホームページのまとめとして、それぞれのリンクを下記に掲載しておくので参考にしてみてください。

ニュース・時事

特別区の最新のニュースを把握することは、論文対策だけではなく面接対策にも役立ちます。
電子版の新聞で「○○区」などと検索するとその区に関するニュースを調べることができるので、日頃から情報収集することをオススメします。

ただし、途中から有料記事となっていて見れない場合もあるので、余裕があれば受験期間だけでも電子版の新聞を契約するとよいかもしれません。

オススメのニュース媒体としては、下記の新聞を挙げておきます。
東京新聞や都政新報は聞き慣れない人が多いと思いますが、首都圏や東京の地域情報を発信している専門新聞社なので、特別区受験生は一度目を通してみるとよいでしょう。

ニュースまとめ

  • 東京新聞
  • 都政新報
  • 読売新聞
  • 朝日新聞
  • 毎日新聞
  • 産経新聞
  • 日本経済新聞

武田講師

公務員を目指す者として「社会問題に敏感になること」は非常に大切なことです。

②模範答案を活用する

情報を集めたらいよいよ実際に論文を書きたいところですが、いきなり論文を書き始めるのは難しいものです。

まずは特別区用のテキスト等を手に入れ、そこにある論文の模範答案をできるだけたくさん読み込んで覚えていきましょう。
音読や書き写しをしたほうが頭に入るという人はそれでも構わないので、自分のやりやすい方法でやってみてください。

これにより、よい論文の文章の雰囲気や言い回し、構成、さらには特別区に関する知識を身に付けることができるようになっていきます。
また、せっかくやるなら同じテーマを複数やるより、異なるテーマを10~20ほどやっておくとよいでしょう。

模範答案のすべての文章を丸暗記するのか?と焦る人もいるかもしれませんが、重要なのは暗記ではなく「答案の内容をよく理解し自分の中に落とし込むこと」です。

文章を書くが苦手な人でも、地道に答案の読み込みを繰り返すことで変化が感じられてくるはずです。
反対に、文章に自信がある人はここにはそれほど時間を割かず、ある程度答案の内容が掴めたら次のステップに進んでしまいましょう。

③実際に論文を書く

模範答案の内容を落とし込むことができたら、実際に論文を書く練習に入ります。
その際は以下の4つに注意しましょう。

時間を計る

最初の数回は時間を気にせず完成させることに集中してもよいですが、ある程度慣れてきたら本番のつもりで時間を計って書きましょう。

特別区Ⅰ類の論文試験では、80分で1000~1500字を書かなければなりません。
人によって異なりますが、最初の10分程度は論文の構成(序論・本論・結論)、最後の5~10分程度は見直しに時間を使うことになるので、実質書ける時間は60分程度となります。

これは他の公務員試験と比較しても余裕のある時間とはいえないため、やはり本番と同様の時間で書く練習をしていく必要があります。
構成を考えるのに何分かかるのか、書くスピードはどのくらいなのか、試験当日までに自分のペースを掴んでおきましょう。

急いでも丁寧に書く

どんなに素晴らしい内容を書いても、文字が読みづらいのは大きなマイナスです。
試験官はたくさんの答案を読むのですから、「この受験者の答案は読みにくい」と思わせてはいけません。

読み手に配慮できない人物だと思われかねないので、雑な字や小さすぎる字、薄すぎる字などにならないように注意しましょう。
書道の師範のような美しい文字を書ける必要はありませんが、丁寧さや誠実さが伝わる文字であることが大切です。

武田講師

丁寧さが伝わってくると採点者としても気合が入ります!

また、冒頭は丁寧でも、終わりのほうで焦ると文字が雑になる人がいますが、これもマイナスです。
書くスピードはそれなりにありながらも、初めから終わりまで同じテンションで書けるようにし、全体を通して統一感のある論文に仕上げていきましょう。

そして、意外と見落としがちなのが誤字脱字です。
多くの人はデジタルばかりで文字を書く機会がだいぶ少なくなっているので、やはり手を動かして文章に慣れる作業を繰り返し行うことをオススメします。

本番と同じ時間帯に練習する

これは見落とされがちですが、ぜひ注意しておきたい点です。

特別区Ⅰ類の論文試験は第1次試験の最後に行われるため、頭や身体が疲れてきた中で論文を書かなければならず、慣れておかないと早々にスタミナ切れになってしまいます。

そのため、できるだけ練習でも本番と同じ時間帯か、他の勉強等をやった後に取り組むのがオススメです。
実際、様々な予備校において、午前中に学科試験の講義を行い午後に論文を書くという時間設定をしているところもあるので、これは多くの受験生が日々の練習に取り入れている手法となります。

添削を受ける

誰でも、自分では一生懸命きちんと書いたつもりでも、第三者が読むと言葉遣いがおかしかったり文章がねじれていたり、何を言いたいのか分かりづらかったりするものです。

教養試験対策は独学で完結させることも可能ですが、論文はぜひ第三者に読んでもらってアドバイスを受けるべです。
第三者といっても、論文の素人や公務員試験に詳しくない人に見てもらってもあまり効果的ではないので、できれば公務員試験予備校の講師などに添削してもらうことをオススメします。

もちろん、添削を受けて終わりではなく、それを踏まえて同じ論文課題にもう一度向き合うことも大切です。
どの部分が減点となっているのか、あるいは高評価を得ているのか採点内容をよく確認し、本番で通用する「良い論文」を自分の中に叩き込んでいかなければなりません。

プロコネクトでは、特別区Ⅰ類に特化した論文添削を提供しています。
具体的な改善点から文章表現の修正まで徹底した指導を行っているため、プロからの客観的な評価を得て合格を勝ち取っていきましょう。

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武田講師

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まとめ

今回は、特別区Ⅰ類の論文過去問をもとに傾向と対策方法について解説しました。
この記事を読んでいただいた受験生の皆さん、今日から取り組むべきことが明確になったのではないでしょうか。

特別区Ⅰ類の論文対策においては、傾向を把握して正しく対策をすれば怖いことはありません。
「情報収集する」「論文を書く」「添削を受ける」を徹底して論文力を着実に向上させ、苦手な論文も自信をつけていきましょう!

予備校概要

プロコネクト
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プロコネクトは「特別区対策に完全特化」した予備校です。コンセプトは「日本で一番特別区対策に強い予備校」&「必要な指導を、必要なときに必要なだけ」。個別ニーズに応じた指導を提供し、受験生の合格力を一気に高めます。特別区を目指すなら、専門予備校プロコネクト!